まったりのんびりほっこり

ゲームや読書などを中心に、日々感じたことを書いてます。

『下鴨アンティーク アリスと紫式部』感想

 

先日、kindle集英社オレンジ文庫のセールがやっておりました。

元々オレンジ文庫の『後宮の烏』を購入していたのですが、この著者さんの前作である『下鴨アンティーク』シリーズも気になっており、今回のセールを機に一気に購入してしまいました。

 

そして実際に読んでみると、とても面白かったし心がほっこりしました!

今のご時世、こういう物語は本当に癒されますね。。

 

そんな訳で、今回は『下鴨アンティーク アリスと紫式部』の感想を綴らせていただきます。

 

 

アンティーク着物にまつわる謎解き

このシリーズ、なにより目を引くのが表紙のデザイン。

とても綺麗で華やかです。

これだけでも興味がわいてしまいます。

おまけに古都京都でアンティークの着物が題材にした物語なんてオシャレ!

と思って読み進めると、どうやら私の思っていたストーリーとは若干違っておりました。

着物、それもアンティークと聞いて勝手に「古物商」的なものをイメージしていたのですが、良い意味で裏切られました。

 

主人公の鹿乃は、祖母から「開けてはいけない」と言われていた蔵を、祖母の死後ひょんなことから開けてしまいます。

そこには、いわくつきのアンティーク着物が保管されており、その謎を解いていく、と言うのがストーリーの大筋のようです。

 

この「いわくつき」ですが、事故物件のようなものではなく、どちらかというと不思議系というか付喪神系なのでしょうか?

 

突然模様が変わってしまった着物の謎などを解いていくストーリーには、謎解き要素ももちろんですが、その謎の解き方や謎そのものが丁寧に描かれていて、読後はとても優しい気持ちになります。

 

また、今回のお話には私の大好きな猫も関わっていて、表紙も猫ですし、猫好きとしてはとても楽しんで読めました。

 

物語は短編形式で、全て繋がっています。

タイトルにある『アリスと紫式部』も、うまくストーリーに取り込まれており、特にアリスは「不思議の国」のほうではなく「鏡の国」のほうで新鮮でした。 

私は「鏡の国」の方が好きですので、余計に感情移入しちゃいましたね。

 

紫式部は詳しくないですが、源氏物語が題材になっており、昔読んだ記憶がよみがえり懐かしくなりました。

 

また、この小説はとにかく感情表現が繊細で丁寧に描かれています。

鹿乃と慧の感情のやりとりや、謎解きに関係する人たちの気持ちの変化などが、優しく自然に伝わってきます。

 

特に最終話の過去の祖母と祖父のやり取りなどは、祖母の素直になれない天邪鬼な感情などが手に取るように描かれており、とても歯がゆく、そんな祖母を見守る祖父がとても素敵で思わず惹かれてしまいました。

 

魅力的な主なキャラクター

野々宮鹿乃

主人公で今どきの高校生にしては珍しく、休日には着物を着ています。

両親を早くに失くしたため祖母に育てられましたが、祖母が他界したため、現在は兄の良鷹と、その友人の慧との3人暮らし。

 

家事は分担のようですが、料理は高校生にしてはとてもよく作れるな(それとも私がダメすぎ?)と思うようなものを作っています。

性格はしっかりとして、だらしない兄を文句を言いながら世話しながらも、見守っている感じがほのぼのします。

京都弁を話しており、ヒロインが京都弁を話しているのがちょっと珍しくもありました。

 

祖母の影響かアンティーク着物が大好きで、とある事件をきっかけに祖母の蔵を引き継ぐことになります。

 

また、同居人の慧に淡い想いを抱いているようです。

 

野々宮良鷹

鹿乃の兄で、鹿乃とは違いぐうたらな性格な割には、顔と頭はいいようです。

鹿乃とは10ぐらいでしょうか、年齢が離れており古美術商を営んでいて、目は確かなようです。

 

とにかくこの良鷹のぐうたらさは、目につきます。

いつもソファに寝転んでいる感じですし、食事も当番の誰かが遅くなると、自分で作るよりも店屋物(それも高い物)を頼んでしまう。

だけど、かきあげを鹿乃の分も食べようとして、デザートのプリン抜きと言われると、齧りかけたかき揚げを返すなど憎めない(?)ところも。

 

八島慧

良鷹の友人で、近所の大学で近世文学を教えている准教授。

良鷹とお互い同士が唯一の友人らしく、あまり人付き合いはしていない様子。

10年ほど前、良鷹の口利きで野々宮家の離れに居候し、祖母に気に入られていたようです。

 

常に黒っぽい服を身に着けていて、大学では女生徒に人気が高いよう。

 

また、ぶっきらぼうなようでいながら常に鹿乃を気遣っていて、その気持ちは妹に対するものとは少し違ってきているようです。

 

 

この3人をメインに、アンティーク着物に関する謎解きが行われていきます。

 

まとめ

謎解きとは言っても、ハラハラドキドキするようなものではなく、どちらかと言うと、アンティーク着物に関わる人の、気持ちの変化や落としどころを探っていく形に近い印象かな。

読んでいてとても温かくなるストーリーで、ほのぼのとした物語でした。

 

まだ1巻しか読了していませんが、これからどんなアンティーク着物の謎が現れるのか、また鹿乃と慧の微妙な関係など先の展開がとても楽しみです。