まったりのんびりほっこり

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宮部みゆき『黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続 』感想


宮部みゆきさんの「三島屋変調百物語」シリーズの第6弾です。

前巻でおちかが無事に嫁に行って、今回から三島屋の次男坊富次郎に聞き手が変わりました。

 

ずっと読みたくて仕方なかったのですが、文庫版もKindleも出ない(笑)。

ですので、諦めて紙版を購入しましたが、相変わらず分厚いですね。。

でも、やはり紙はいいなと、改めて感じました。

 

今回は、この『黒武御神火御殿』の感想です。

 

 

※ネタバレ要素がありますので、読まれる際はくれぐれもご注意ください。

泣きぼくろ

富治郎の幼馴染が今回の語り手ですが、この家族に起こった一家離散のお話となります。

何だか不謹慎ですが、江戸時代の女性週刊誌かワイドショーを見ている感じでした(笑)。

 

いやもう、女性の執念は怖い。

泣きぼくろの正体が、幼馴染の父親と過去に何かあったのか、無かったのか。

「勘弁してくれ」というセリフは、どういう意図があったのか。

知りたいですけど、知ってしまうのも無粋かな。

 

いずれにしても、取り憑かれた兄嫁達も気の毒でした。。

もちろん、言い寄られた男性陣も気の毒ですが、、、。

 

それにしても、ちぃ姉ちゃんが幼いながらも賢いのには感心しました。

最初からみんなこの子の話を聞いていれば良かったのに。

それに母親も辛かっただろうに、事が済んだ後の行動力には逞しさが。

母は強しですね。

 

幼馴染も所帯を持ち、今は幸せそうで良かった。

ただ嫁さんの顔については、こちらも含みを持たせ、一筋縄ではいかない終わり方でした。

 

 

姑の墓

今度の語り手は上品な商家のおかみさんで、故郷のお話でした。

養蚕が盛んな土地で、墓地のある裏山は春には山桜などが咲き乱れ、そこからの眺めはまさに絶景だとか。

想像するだけでもうっとりしてしまいそうですが、そこで毎年行われる花見には、どうやら決まりがあるようで。。

 

読み進めていく内にぞっとしました。

前の章の「泣きぼくろ」も女の執念のようなものでしたが、こちらは質が違います。

嫁姑問題なんていえば、どこにでもあるよね?というそんな軽いお話ではありませんでした。。

代々受け継がれてきた決まり事には、逆らっては行けない姑の怨念があったんですね。。

 

それにしても最初のお姑さんがいきなり変貌したのには、何か理由があったのか。

それとも呪いのようなものだったのか。

そこははっきりと触れられてはいませんでした。

ですが、語り手の実家の女性が全員不幸になった訳ではなかったのが救いでしたね。。

 

百物語最後で富治郎が語り手へ伝えた言葉が、どうかこの怨念を断ち切ってくれますように・・・と願うばかりでした。。

 

 

同行二人

とある飛脚のお話なのですが、前半はこの飛脚に起こった出来事が描かれます。

色々あった中でも幸せだった彼に起こった、不幸な出来事が気の毒でした。。

両親を始め、妻も娘も流行り病で亡くすなんて。。

何時の時代でも遣り切れないですね。。

 

後半は、この悲しみを背負った飛脚が箱根の茶屋で、どういう訳かのっぺらぼうのような幽霊に付きまとわれる話に変わります。

といっても、ただ一定の距離を保って付いてくるだけなのですが、そののっぺらぼうにも、妻と娘を失った辛い過去があることがわかり、こちらの話も辛い。。

 

ですが飛脚が賽の河原に行ったことで、本当の意味で二人が泣くことが出来のが救いだったんでしょうね。

その後の飛脚の人生も上手く行っているようで本当に良かった。

 

最後に富次郎が描いた絵が、目に浮かぶようでした。

 

 

黒武御神火御殿

自分の力ではどうしようもできないことが起きた時、人はどう捉えるのか。どんな行動を起こすのか。

そんな事を考えさせられるようなお話でした。

 

きっかけは富次郎の所にもたらされた印半天。

これがきっかけで、不気味なお屋敷に迷い込んだ語り手のお話へと進んでいきます。

 

序盤は新婚のおちかと貫一夫婦の初々しいやり取りが垣間見られて微笑ましかったのですが、それもあっさり吹き飛ばされてしまいました。。

 

屋敷を巡る季節の速さや、怪物の登場、屋敷の周りの風景が一定でないことから始まり、御神火御の由来や、火山の描かれた襖。

そして甲冑の武士の唱える言葉など、どんどんミステリーというかホラーに変わっていきます。

 

罪とは何か?それを裁くのは誰か? 

この屋敷に込められた秘密とは?そして抜け出すための方法とは?

 

逃げ出す手段の、何とも残酷で底意地の悪い主人の怨念にゾッとしました。

その為に命を落とした人物の事を思うと、遣り切れませんでした。。

ただ、無事に脱出できた二人の交流が、せめてもの救いでしょうか。。

 

さすがの富次郎も、今回は印半天の処分に困ったようですが、上には上がいるものですね。

最後、富次郎がいつもの絵ではなく字で締めくくったのも、何となくうなずけるような気がしました。

 

 

まとめ

久々に読んだ「三島屋変調百物語」シリーズ。

おちかに慣れていた分、富次郎には彼の良さもあり、新鮮でした。

気になっていたおちか夫婦の様子も少し描かれていて、これは嬉しかったですね。

 

百物語については、軽いものから重いものまで様々で楽しませてくれました。

ただ、やはり最後の「黒武御神火御殿」は題名になっているだけあって、かなりボリュームもあり、重いお話でした。。

 

次巻も購入済みなので、こちらもじっくりと読み進めたいと思います。

やはり宮部みゆきさんのお話は面白いですね。