まったりのんびりほっこり

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森博嗣『幽霊を創出したのは誰か?』感想

森博嗣「WWシリーズ」4作目となる作品は、幽霊の話。

科学とテクノロジーを基盤とするであろうこのシリーズにとって、一番相応しくない題材なのでは?と少し心配になりましたが全くの杞憂でした。

さすが森博嗣先生です。

 

※多少ネタバレ部分があるかと思います。お読みいただく際はくれぐれもご注意ください。

大まかなあらすじ

ひょんな事から幽霊の噂話を聞いたグアトとロジ。

どうやら家同士の争いで結ばれる事のなかったカップルの幽霊らしいとのこと。

もちろんはなから信じるつもりもなかった二人ですが、幽霊が出たという城跡を見に行く事になります。

 

その城跡で悲鳴をあげている女性を発見し、彼女を探しに行ったロジを追いかける途中で、グアトはある男性と出会います。

男性はどうやらその女性を探している様子で、グアトが大まかな位置を教えたのですが、結局その後二人とも行方がわからなくなってしまいます。

 

女性が悲鳴をあげていたこともありロジが警察に連絡を入れたところ、どうやら消えた男女が幽霊の目撃情報の二人に似ているらしいという情報を得ます。

ただ今までの噂は目撃情報のみで、グアトのように会話した例はなかったようです。

その為か、男性幽霊の生前の身内であるという資産家が突然会いに来て、屋敷に招待をされます。

そうしていざ屋敷に行くと、ある事件に巻き込まれる事に・・・。

 

幽霊の概念

今回も前回同様、特に大きな争いなどもなく(少しはありましたが)割と淡々とあっさりしたストーリーでした。

グアトとロジが出会った男女については劇的な解決編などもなく、こちらも淡々と解明されます。

 

今回のお話は、タイトルにもある通り「幽霊の創出」が主軸でありますので、グアト達が出会った男女の正体は、ある意味それほど重要な要素ではありませんでした。

むしろ幽霊という概念が出来上がっていく過去の背景と、グアト達の生活している現代の背景を考察し、現代で幽霊を創出する方法に重点を置いていたと思います。

 

死を恐れていた時代から、誰もが死を恐れなくなった時代となり、人類の未来はより制限のない自由な思考が可能となる方向へシフトしているようです。

様々な制限のあるリアルな肉体を手放し、バーチャルな世界での自由な生活を実現するための技術が研究・開発されています。

幽霊という概念が、肉体を無くした魂であるのなら、リアルな肉体を脱ぎ捨てバーチャルな世界で生きている人達もまた幽霊と言えるのではないのか。 

そうであるなら、今回の幽霊騒動についてどのような決着がつくのか。

ここまでくると、何となく物語の落とし所の想像はつくかな?と感じました。

 

リアルとバーチャルの境界

前巻の感想でも少し触れましたが、Wシリーズでは人工知能やトランスファとの関わりがメインであったのに対し、WWシリーズではリアルとバーチャルの関係性がメインのように感じます。

 

グアト達を招いた資産家の家族関係や過去などが明らかになるにつれ、ますますリアルとバーチャルの境界線が曖昧になったような。。

リアルである意味。バーチャルでの可能性。

本当にリアルな世界が本物なのか。バーチャルな世界は偽物なのか。

どちらが正解はわかりませんが、ただ資産家の正体には驚きました。

こういう事が未来に起こりうる可能性は十分にあるのでは?と思わさざるを得ない展開であり、いつもながら森博嗣先生の創造力には驚かされます。 

 

余談ですが、ロジがどんどん可愛くなっていくのがとても微笑ましいなと思いました。

グアトもなんだかんだでロジを大切にしていますしね。

 

最後に

この後WWシリーズがどこへ向かっていくのか。

今後真賀田博士がどう絡んでくるのか。

続刊を楽しみに待ちたいと思います。

※2020/12/23修正済み