緊急事態宣言の影響で今年も巣篭もりとなったゴールデンウィーク。
某ゲームロスでぼんやりと過ごしていたところ、ニンテンドーSwitchの乙女ゲームニュースで紹介されていたこのゲーム。
喫茶店という、どこかアットホームな雰囲気と、もともと気になっていたこともあって、早速プレイする事にしました。
ですがいざ始めると、そこには丁寧に作り込まれた重厚な世界が広がっており、瞬く間にその世界に入り込んでしまいました。
今回は、そんな『幻奏喫茶アンシャンテ』の感想をのんびりと綴らせていただきます。
異世界につながる喫茶店
異世界からお客さんがやってくるという、祖父から継いだ喫茶店「アンシャンテ」。
常連客は、魔王に堕天使、首無し騎士に魔獣と、中年のおじさんという、何ともバラエティーに富んだ皆様。
てっきりほのぼのファンタジーな癒やし系のお話かと思いきや、予想外に壮大な世界の物語で良い意味で裏切られました。
また喫茶店の話とはいえすぐに継ぐのではなく、まずは開業準備からと言うのが意外で驚き。
食品衛生責任者や食品営業許可など現実的な資格取得から始まるのです(笑)。
おまけにネット環境に詳しい人外や、卸業者と打ち合わせをする人外など、なかなか型破りな準備に面白くてワクワクしました。
また主人公琴音の前職がブラック企業など、お客はファンタジーなのに、琴音を取り巻く環境は現実的というギャップに、これからどうなるんだろうという、純粋な興味が湧いてきました。
そんな現実世界の住人である主人公が異世界と関わった時、物語は急速にファンタジーへと移り変わって行きます。
それは、思い描いていたほのぼのなものではなく、かなり深刻で重たいテーマを抱えている世界でした。。
※ネタバレ要素がありますので、読まれる際はくれぐれもご注意ください。
カヌス(CV:梅原裕一郎)
誠実で礼儀正しく真面目な妖精界メディオの騎士。
他人を気遣う優しさもあり、街に出れば誰からも親しく声をかけられる人気者。
アンシャンテのガーデニング担当。
ですがその実態は、首から上がないデュラハンと言う首無し騎士。
この外見、初見でのインパクトは絶大すぎました。
乙女ゲームで顔がないって(笑)。
ですがプレイを進めていくうちに、顔なんて無くても気にならなくなるくらい、とても魅力的なキャラクターでした。
カヌスは妖精界の騎士ですが、死を告げる妖精という役割を担っています。
この使命を日常と割り切りつつも、心優しいカヌスを苦しめているんですよね。
カヌスの嘆き悲しみをずっと見てきたティターニアは、その本質は実は寂しがりやだと見抜いているほど。
だから人間界でのカヌスの生活が穏やかで救われるんですよね。
琴音と買い出しに行って、街の人たちから慕われていたり、アンシャンテで他の人外の仲間達と平和なやり取りをしたり。
また、首なし騎士と言われているけど、実際は見えないだけでちゃんと存在してるらしいのです。
そんな寝たふりをしをしたカヌスを琴音が観察するシーンや、落ち込んだ琴音を励ます為デートに誘うのに動揺している姿が、何とも誠実で真面目な彼らしく、とても微笑ましかったです。
そんな平和な日常を脅かす、メディオでの破滅の足音。
妖精界の謎。
世界樹の秘密。
そしてカヌスのかなり重い使命の本質。
どんどん破壊されていく妖精界を見せられ、これほどまでに深刻な秘密を抱えていたのかと衝撃でした。
優しい騎士が逃げずに全うする役割。
この事実を知れば琴音は悲しむ、そんな想いをさせたくない、と葛藤するカヌスと、あなたの居場所になりたいと願う琴音の、お互いの想いを伝えるシーンは、二人の絆が感じられてうっとりするほど素敵なシーンでした。
そして思わず出たカヌスの告白に、カヌス自身がうろたえる様子が可愛い(笑)。
タイミングよく現れたヴェンニーアにも笑いましたが。
そんなヴェンニーアのティターニアを想う強い気持ちには並々ならぬものが。
現状を打破し変革を恐れず、ただ大切な人を救うために取った行動は、考えうる限りで一番確実な方法。
どんな犠牲を払っても姉を救いたいという気持ちが痛いほどわかるから、責めることはとても出来ない。。
それは琴音も同じだったんだろうな。
だからこそ、本当に妖精界が滅びると言う緊迫した状況下で現れたアンシャンテの常連ズは半端なく頼もしくてさすがでした!
そして何よりも琴音の信頼を一身に受けたカヌスの力強いことといったら!
まさに姫(女王)を守る騎士そのものでした。
全てが片付いたあと、驚いた琴音が見たであろうカヌスの姿はとても気になった(笑)。
それにティターニアとヴェンニーアも救われて本当に良かった!と胸を撫で下ろしました。
そしてエンディングは、死を告げる妖精から命を育む妖精として生きていく決意をしたカヌスのプロポーズ。
お花畑の中で、騎士らしく紳士で誠実なカヌスの姿には思わずときめいたほど。
いい男は顔なんて関係ないんだ、と心に刻み込まれた瞬間でした(笑)。
妖精界に希望の光が差す爽やかなエンディングに心が温まりました。
バッドエンドは、琴音を救えなかったカヌス達のその後。
本当にいたたまれなかったですね。。
イグニス(CV:小野友樹)
ぶっきらぼうで愛想がなく言葉使いも乱暴ですが、その実とても相手を気遣う優しい心の持ち主。
ぶっきらぼうな態度は照れ隠しという、もうわかりやすいほどのシャイなんですよね。
焔狼という魔獣のせいか、やたらと動物にも懐かれ、本人もまんざらではないよう。
また、イグニスは獣界ベスティアでは最強の魔獣。
殺し合いが当たり前の世界で、イグニスは殺さないという信念があります。
そんなイグニスルート。
初っ端から腹を空かせて倒れるイグニスに笑いました。
(まぁこれには意味があるのですが、、、)。
それからイグニスの恋愛事情についての話。
番とか雌とか、本当に動物の繁殖行動(笑)。
そして、そんな話をあっさり受け流し気にしない様子の琴音に不満そうな態度のイグニス。
本人の自覚は別として、もう琴音に気があるのがバレバレで見てて楽しかったです。
ただ平和な話で終わるはずもなく。。。
ベスティアからアルムムという魔獣が消えているという情報と、何故か人間界、それもアンシャンテ周辺に現れるという現象。
その現況を調べるためにイグニスがベスティアへ向かうのですが、琴音も何者かによってベスティアに連れてこられてしまいます。
明らかに誰かの意思。
そこで無事に再会したイグニスから、彼の生い立ちと不殺の理由を打ち明けられた琴音。
何か理由があるとは思っていましたが、結構辛い過去を背負っていたんだなと。。
何故こんな残酷な世界になったのかと呟く彼の悲しみが深く、切ない。。
琴音を温めるために抱き寄せていて、せっかくのいい雰囲気なのに、お腹が鳴るイグニスはさすが(笑)。
なんてのほほんとニヤけていたら、襲ってきたアルムムに告げられた真相に驚愕!
さっき、イグニスの生い立ちについて聞いたばかりなのに、あっという間に覆された真相には、すぐにはついていけませんでしたよ。。。
イグニスの気持ちを思うと余計にやりきれない。。
自分が何者かわからない焦燥。
不殺を信じていた琴音をとっくの昔に裏切っていた事実。
それを琴音に知られて、いつ彼女を傷つけるがわからない恐怖。
だからアンシャンテにはもう来ないと告げたイグニスの気持ちも、それを受け入れられない琴音の気持ちもわかり過ぎるほどわかって辛かった。。。
それにしても怪しいドローミ。絶対なんか企んでるだろ?
コロロがあれだけ警戒心むき出しなのも伏線。
おまけにアニキと俺の夢って何?!
なんて思っていたら、それから巻き起こる事件は予想通りドローミの計画。
イグニスを暴走させるための。
その結果招いた衝撃の事態に、思わずバッドエンドかと勘違いしてしまったほど過酷で深刻な展開でした。。。
命喰らいの化け物
生きる災厄 ヴァナル
イグニスを絶望のどん底に突き落とすには十分な真実。
ここから本当にハッピーエンドにどう向かっていくのか?
正直全く想像できませんでした。
ドローミの策略で、イグニスの元に連れてこられた琴音。
イグニスの、惚れた女にこんな欲望しか抱けねえんだと言うセリフには泣けました。
お互い想い合っているのに、普通にアンシャンテのマスターと客として、変わらず過ごしたいのに。
それを遮る壁のなんと分厚いことか。
ただドローミも苦しんでいたんですよね。
この世界の理に。
確かに狂気じみた理屈ですが、間違っているとも言えない。
だからといってとても許せる所業ではないですが。
とうとうヴァナルに変化してしまったイグニスを救うため、ミシェルやカヌス、凛堂が死力を尽くすのですが、ミシェルのチート能力を持ってしても最悪の事態になる可能性も覚悟とのこと。
そんなとき瀕死のはずのイルが現れて状況をひっくり返します。
ただ、イルを治療した見知らぬ男と言うのが気になりますが・・・。
また、かつてイグニスに救われた弱小魔獣達の助力には感動。
イグニスが今までやってきたことは決して無駄ではなかったのだと、報われた瞬間に思わず涙が・・・。
そして琴音もまた、弱小魔獣の一言で自分のやるべきことを決意します。
クライマックスは、無事に元の姿に戻れたイグニスと琴音の想いが交わり、とても温かく優しい思いやりに溢れたシーンでした。
ベストエンドは、日常に戻ったイグニスと琴音の幸せそうなラブシーン。
食事の代わりに男としてだなんて、最初の不器用でぶっきらぼうな彼はどこに行った?(笑)。
コロロも無事に両親の元に戻れてめでたしめでたしでした。
バッドエンドは、イグニスが元の姿に戻らず、氷漬けのまま眠りに落ちるというもの。
ですが最後の無言のセリフには、何やら含みがある気がして、心がざわつきました。。
凛堂(CV:諏訪部順一)
政府の超常事象対策機関(GPM)に所属する壮年の男性。
魔王や魔獣のような呼称が、何故か「中年」という可哀想なおじさま(笑)。
とは言え、他の人外ズ達よりも紳士でダンディな魅了に溢れ包容力もバッチリ。
何より控えめでありながら、いざという時はかなり強い戦闘能力の持ち主で守ってくれます。
そして良くも悪くも自分のことはいつも後回しで他人を優先してしまう面も。。
また、琴音とはかなりの年の差があるので、どんな恋愛になるのか純粋に興味がありました。
そんなダンディな凛堂ルート。
のっけから何故か御門の彼女の誕生日プレゼント選びにつきあわされる琴音。
あの御門に彼女がいたというのも驚きだけど、偶然出会った凛堂の「深入りしないほうがいい」と言うセリフにも何やら意味深だな~なんて思ってたら、予想外の事実にまたもやビックリ。
なるほど、これで凛堂が時折見せる辛そうな表情や、ドライブで聞いた妹の話にも納得。
凛堂の妹について詳細に語られた事実。
それは、凛堂雫が引き起こした実験事故。
殺しそこねたと言う凛堂の気持ちも、実験サンプルと言い張り命だけでも救った御門も、等しく雫を愛していて。。
その気持ちが痛いほど伝わるだけに、御門の奇妙に思えたあの行動もとても切なくて悲しい。。くーちゃん。。
本当にやるせない過去を、凛堂も御門も背負っていたもんだ。。。
特に普段の御門からは到底想像出来ないですし、過去を知ってしまったら、もう御門が気の毒過ぎて、とても今までのように見られません。。
そして御門の本当の願い。。。
そんな凛堂とお家デートをすることになった琴音。
琴音に人間の女の子としての幸せを望む凛堂に対し、琴音もまた凛堂に自分の幸せを忘れないで欲しいと告げるシーン。
とってもロマンチックなシーンで、これから!という時に、ミシェルからタイミングよくTEL。
まさか見張ってた!?(笑)。
ところが穏やかな時間が急展開!
突然の御門からの謝罪のTELをきっかけに、GPNで事件が起こり、向った凛堂に呪詛がかけられる事態に。
御門とも連絡が取れない中、凛堂が襲われた時に聞いたという、妹雫の声には不穏しかない。
ミシェルとイルの解析の結果、その呪詛によって凛堂の命はもってあと二日という切羽詰まった状況下で、御門から琴音に呼び出しが。
いかにも不吉な予感が漂う中、現状打破するために向かった琴音に、御門が差し出したのは何とも怪しい「人外化促進薬メタプラジア。
それは人間を人外に作り変える薬。
凛堂を救う唯一の方法。
あれだけ人外と人間の違いを説き、妹を含めて不幸になった例をいくつも観てきた凛堂を、救う道がこれしかないとは何とも皮肉すぎる。。
凛堂が決して望まない道でも、それでも生きていて欲しいと願い、彼のその後の人生を背負うという覚悟をもって、苦渋の決断をした琴音の辛さ思うとやりきれなかったです。。
ーそして。
人外に変化した凛堂の姿。
思っていたほど変わっていなかったので少しホッとしましたが、それでも凛堂にとっては今まで積み上げてきた全てが一気に崩されてしまったんですよね。。
カヌスが聞き出した、凛堂の琴音に対しての、そして一人の人間としての本音。
あったはずの未来への希望。ペアリングなんて考えていたのか(泣)。。
そして絞り出した「人外になんかなりたくなかった」という慟哭。。
盗み聞きしていた琴音もまた気の毒すぎていたたまれなかった。。
だから琴音が贖罪の意味も込めて凛堂を誘って遊園地に行ったとき、琴音が放った「凛堂さんが好きです」という言葉。
凛堂と琴音が出会ってから今までの思い出がフラッシュバックして、琴音の想いの全てが詰まっているのが分かるからもう堪らなかった。。
頼むから結ばれてくれ!と思わず突っ込んでしまいました(笑)。
そんな琴音の為を想って彼女を近づけさせまいとする凛堂。
そして優しい凛堂が逃げないようにと琴音が取った行動に、年甲斐もなく赤くなる凛堂が可愛かった(笑)。
二人の心が余りにも綺麗すぎて、その優しさに心が洗われるようでした。
アンシャンテに戻ってからの、ミシェルの赤飯云々には、本当に覗きか?と笑わせてもらいました。
一方で、御門のGPNの乗っ取りとも言える行動の裏には、またしてもとんでもない事実が隠されていて。。
雫を人間に戻すために昇進の話を受けたのに、まさかその部署が、あまりにも理不尽な口封じという理由で雫を人外に変えていたとは・・・!
これには御門に同情もしますよ。。
けれど御門の言う雫を人間に戻す方法は、他者の犠牲の上に成り立つ幸せ。
こんな狂気じみた計画に凛堂が協力するはずもなく。
だから、普段物静かな凛堂が「僕たちの普通を舐めるなよ!」と叫んだのには痺れた!
改めて凛堂の力強い信念と格好良さを再認識しました。まさに大人の魅力。
そして人外と化した兄妹の戦いの結末には涙しかありませんでした。。。
どちらも引けない理由があり、生き残るのは片方なんて。。
凛堂の揺るぎない決意と、御門の悲痛な願いが両立できないとはわかっていても、どうにかして両者が救われる方法はないのかと。
最後までそんな期待を抱いてしまいました。。
また最期に明かされた御門が若く見える理由にも涙。。。
御門なりに苦しんで悩んで出した結論だったのですが、琴音との違いを口にするあたり、他にも何かやり方があったと思うと、ますますやりきれなかったです。。
ベストエンドでは、御門の起こした事件を、本人達の名誉を守るためとGPMの闇を葬るために凛堂が改ざん。
そしてアンシャンテで琴音の手伝いをしている凛堂が、琴音の遊園地での告白に応えるのですが・・・。
もう凛堂の大人の色気と魅力と優しさに満ちあふれたラブシーンに目も心も釘付け(笑)。
このルートを始める時に気になっていた年齢差など、全く気にならないくらい胸キュンなシーンにニヤけまくり。
これから先どんな事が起こっても、この二人なら乗り越えていけると信じられるエンディングでした。
バッドエンドは、御門と雫の事件の後、二人を差し置いて生き残ってしまった罪悪感から凛堂が姿を消してしまう話。
琴音に宛てた手紙の最後の言葉を信じて、彼を待ち続ける彼女の姿が切なかったです。
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